近年、アメリカの野球について時短がトレンドになっています。振り返るとMLBでは2017年からの申告敬遠制度の実施から2020年にはワンポイントリリーフの禁止、また延長戦でのタイブレークの導入と、試合時間の短縮を目的とする措置が実施されています。2023年にはピッチクロックというルールが追加されました。日本でもアメリカに倣ってタイブレークやピッチクロックの導入が検討されています。この記事ではMLBにおけるピッチクロック導入の背景やその結果、また日本に導入されるかをまとめてみました。
ピッチクロック導入が試合時間短縮に繋がるか
以下のデータから、ピッチクロックが野球の試合時間の短縮に大きく貢献しました。
2016年 3時間5分
2017年 3時間9分 申告敬遠導入
2018年 3時間5分
2019年 3時間10分
2020年 3時間6分 タイブレーク導入 ワンポイントリリーフ禁止
2021年 3時間14分
2022年 3時間7分
2023年 2時間39分 ピッチクロック導入
背景
MLBが試合の長時間化により若者の野球離れが進んでいるのではないか、などと懸念したため
ピッチクロックとは
投球間の時間を制限する「ピッチクロック」は試合時間の短縮を目的に、2023年から導入されました。 投手は走者なしで15秒以内、走者がいる場合は20秒以内に投球動作に入るというルールです。
投手の場合
投手はボールを受け取ってから、走者なしでは15秒以内に、走者ありでは20秒以内に投球動作へ入らなくてはいけません。また2024年から走者ありの場合のみルールが見直され、20秒だったルールが18秒に短縮されました。これに違反した場合、自動的に「1ボール」が追加されます。
投球動作とはピッチャーがバッターに向かってボールの投げる動作のことで、投球動作に入ったかどうかは投手の軸足とは反対の足が投手板(プレート)の後ろの縁を越えたかどうかで判断されます。投球動作を始めたら途中でやめることはできず、バッターに向かって一連の動きで投げ終わらなければなりません。なお投手は1人の打者に対して2回まで牽制球を投げるか、または投球板(プレート)から足を外すことで、ピッチクロックをリセットすることができます。
打者の場合
打者は、制限時間の8秒前までに打席へ入り、打つ準備を完了しなければなりません。これに違反した場合、自動的に「1ストライク」が追加されます。
打つ準備とはバッターがバッターズボックス内に入り、打つ構えをすることで、バッターはピッチャーの投球が終わるまではバッターズボックスの線内に留まっていなければならないことです。なおタイムをかけてバッターズボックスから外れるのは1打席1回までになります。
メリット・デメリット
メリット
大リーグ機構によるとピッチクロックを導入した2023年の1試合あたりの平均試合時間は2時間39分49秒と発表しました。これは、ピッチクロックを導入する前の2022年の平均試合時間の3時間3分と比べ24分短いということです。このように試合時間の短縮に貢献していることが分かりました。
他にも観客側からの肯定的意見として「リズム感のある試合展開には必要」や「日本と比べてすごくテンポが良い」などがあります。
デメリット
大谷翔平選手はピッチクロックについて「間違いなく負担は増えている。それは間違いないとは思うので、レスト、リカバリーというか、体への負担自体、短い時間で多くの仕事量をこなすというのは、負担自体は間違いなくかかっているとは思います」と述べているとおり、投球間の時間が短縮された影響で身体的負担が増加しているとの見解を述べています。
また観客側からの否定的意見は「ピッチクロックで盛り上がりや緊張感がなくなる」や「駆け引きの要素がなくなる」などがあります。
日本ではどうなる
アメリカに倣い導入へ
日本野球機構(NPB)でもピッチクロックは導入可否を検討されています。2023年のプロ野球の1試合当たりの平均試合時間は3時間7分でした。現段階でのピッチクロックの採用は見送られていますが将来的にはタイブレーク制度とともにピッチクロックも同様に導入されるのではないでしょうか。
アメリカの野球は時短がトレンドであり、WBC(ワールドベースボールクラシック)などの国際大会がMLBのルールを準拠している状況、日本野球が国際大会出場に積極的である状況から日本でも導入されると考えます。
タイブレークの導入についてはこちらの記事もご覧ください。
日本プロ野球 3時間7分
メジャーリーグ 2時間39分
また以下の2点についても導入される要因になりえると考えます。
他のスポーツとの比較
また、他のスポーツを見るとサッカーやラグビーが2時間弱であることから野球が比較的試合時間の長いことが分かります。
サッカー 2時間弱
バレー 1時間~2時間半
テニス 1時間~2時間
バスケットボール 1時間半~2時間
ラグビー 2時間弱
今の若者の行動について
そのほか今の10~20代の若者は、必要な情報はスマートフォンからすぐに調べることに慣れており、3時間を超える試合時間は長すぎてさらに野球離れが進んでいくこと懸念されています。
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